ジョー・ジラード「営業の神様」

~導入~

金持ち父さんの筆者がセールスについて学べと言っていたので、とりあえずセールスに関して学べる本を書店で探しました。私の本業はエンジニアなので、セールスといわれても全く想像がつきません。そのため、すでに営業の仕事についている方向けの、How toを効率よく学べる本というよりは、営業にとどまらず、他の仕事についている人にもある程度共感できるような内容だと面白いだろうなと思い、本書を手に取りました。(金持ち父さんの筆者がセールスを学べと言っていたのは、お金に関するリテラシーを高めることの一部としてであり、この筆者の体験から読み解くに、特にセールスはモノを売るなんて想像もつかない内気な自分を変えることが目的であったように解釈できます。この点も本書を手に取った理由の一つです。)

 世界No.1のセールスマンとしてギネスブックにも認定された、アメリカのセールスマンの教えが書かれた本書です。本のカバーに書かれていた、

秘密などない。近道も奇策もない。

という言葉に心惹かれました。動き出す前から最短距離を考えることは大事ですが、私の場合は考えすぎて動けなくなってしまうことが多いので、とりあえず動き出して後から修正を図っていきます。結果的に回り道をしてしまうことになっても、それはそれで他にも得られたものがあったでしょうし。

 

~ジョー・ジラードとは(本書末尾要約)~

 

アメリデトロイト州の1928年に生まれ、40余りの職を転々としたのち、35歳でミシガン州のシボレー販売店でセールスマンとなる。わずか3年で自動車販売台数米国トップにのぼりつめ、4年目以降、引退までの12年間「世界No.1のセールスマン」としてギネスブックに認定された。今なお、その記録は破られていない。

15年間合計販売台数13001台。

 

本書のタイトルに違わず、まぎれもなく神様ということですね。

 

~個人的に気になった内容(所感)~

 

ルール2「ポジティブな姿勢を持つ」

“身のまわりで起きることは必ずしも自分でコントロールできない。誰かがくれるものだけをモチベーションの頼りにしているなら、それは要するに自分の未来を他人の手にゆだねているということだ。”

“武器というのは、一言でいえば姿勢だ。”

 

 モチベーションとポジティブな姿勢について述べられています。これって意外と頭の中を切り替えるうえで、面白い考え方だと感じました。なぜなら、私は何かに取り組むときに、モチベーションが上がらないとか、自分の気持ちが何らかの理由によって整わないような意味で使用していることが多いためです。他力本願的なモチベーション設定では、それが得られた時にしか自分の気持ちが前を向かないので、自分の人生を誰かの手にゆだねているということです。従って、モチベーションを置くところは間違えないでねと。(筆者は家族の存在がモチベーションであったそうです。)そして、自分で前向きな姿勢を作ることが大事ですよと謳っています。

 これが、

“あなたがしなければならないことの中で、間違いなくもっとも難しい。”

と述べられているように、大変なことですね。このためのモチベーションを自分の中で見つけましょう。

 

ルール9 「連絡を絶やさない」

“人と接することの多い仕事やサービス業についている人はとくに、顧客や見込み客との連絡を絶やさないようにすることがきわめて重要だ。” 

本書の各ルールのうちで、最も分量が多い項です。内容は、筆者が一度つかんだ顧客を手放さないために行ったことが細かに書かれており、力の入れようがうかがえます。

“本当の営業とは売った時から始まる。結婚のようなものだ。”

とも書かれており、素人目戦ではいかに契約を勝ち取るかが営業と思っていましたが、そのあとの方が重要なんですね。これは、新規の顧客を獲得するより既存客を維持することの方がコストが低いことが理由です。そのためには特に、

“顧客との連絡を絶やさないこと” 

が必要。加えて、筆者の取り組みを見るに、頻度もさることながら創意工夫して相手に印象付けることが重要ですね。私の場合は社内のエンジニアなので、仕事が舞い込んでくることがしくみ化されており、このように相手の存在の有難さに立ち返ることはあまりありませんでした。むしろ、Too muchになると、煩わしく感じたりもしますし。社内か社外かは、ビジネスマンの基礎としては確かに関係ないですね。

 また、本書で述べているプライベートで大切な人に対しては、もっと頻度を上げようというところ、私は日々が忙しいと自分のことだけに流されてしまいがちです。そのため、ルール3「計画を立てる」で述べられている、

”自分にとって大切なものを決めなければならない”

に則って、時間の使い方の優先順位をはっきりとさせた方がいいですね。

 

ルール13 「自分にご褒美をあげる」

“エンジンを休ませなかったがためにオーバーヒートしてしまうのを防ぐことだ。”

"いつかベストになるよりも、いつも自分のベストを尽くすほうがいい。それができれば毎日勝者になれる。それこそが究極のご褒美なのだ。"

 

 ここまで読み進めてきて、超ドストイックで前向きな人間が、自分に対するご褒美は必要というんだから、これは真理なんでしょうね。正直、休まないでも頑張り続けられる、休むことは甘えだと、自分の感情を切り捨ててきたこともあり、それでもうまくいかないことは往々にしてありました。そうなると、自分は凡人だからなと、自分を追い込む発想が生まれてきて、好きだと思えることも楽しくなくなってしまいます。その点では、筆者のように粘り強くストイックであるためには、最も重要なルールではないでしょうか。まずは自分を休ませる。そして、

”おそらく何よりも素晴らしいご褒美は、自分の幸運を人に分け与えることだ”

と筆者が言うように、誰かのために時間を割くことって、優先順位の高いことで、忙しい人にとって、意外と見落としがちなことではないでしょうか。