「確率思考の戦略論」森岡毅、今西聖貴

~導入~

以前読んだ金持ち父さんの影響で、マーケティングについて勉強したいと思いました。また、個人的に投資を始めたので、企業の行う事業が市場とどうかかわりがあるのか、勉強できたらとも思っています。そういう意味では、強い目的意識があったわけではないので、読むのに時間がかかりすぎました。内容もなれない人にとってはかなりマニアックで、大変な本でした。またいろいろと読み漁ってから戻ってくると思います。

 

~所感~

 

第1章

 “Evoked set”の説明は非常にわかりやすかったです。

袋の中にハーゲンダッツと書いた球が5個、チョコモナカの玉が3個、雪見だいふくの玉が2個入っており、袋の中身をかき混ぜて、中を見ないで1個だけ球を取出し、またその球を戻す事象の確率計算全く同じなのです。

 消費者の購買行動を簡単な確率計算にたとえると、売り上げを伸ばすには自社ブランドの出現する回数を増やすことですね。こうして考えることで、経営資源を投入した際の効果を、定量的に見積もることができます。結果が合う合わないは別にして、合理的な理論に基づいているから判断にも迷わなくなるし、その結果から反省を活かして次のアクションにつなげることもできます。社内で説明を通すのにも有用でしょうし、数字を扱えることはそれだけで武器になると思いました。

 

第2章 

経営資源の配分先は、結局のところPreference(好感度)、Awareness(認知)、Distribution(配荷)の3つに集約されるのです。

プレファレンス、認知、配荷、この3要素について着目するとなかなか面白いです。自社の製品について、プレファレンスはどうか、認知はどのくらいか、どれくらい店頭に並んでいるか、マーケティングの視点からの解釈ができます。 気になったところは、プレファレンスに関わるところがマーケティングの観点から言うとひと括りになるということですね。製品開発や研究にかける投資(製品パフォーマンスを高める)と、ブランドエクイティを高める投資と、共にブランドのプレファレンスを高めるための投資です。このプレファレンスを高めるには自由度が高くて難しい。

 第2章で、筆者の森本さんは、USJの既存のファン層が何を求めてUSJに来ているのかを見極めることについて述べています。より市場からのプレファレンスを獲得するために、どこに着目して経営資源を投入すべきかがここまで議論されていますが、最終的に既存客のプレファレンスを深く分析したことが肝だと思っています。なぜ好まれているかの真因をどうやって分析したんでしょう。インタビューかアンケートか。どんな質問をして、どんなデータを集めたのか。この章でも、現象にとどまらず本質を見抜くよう考えを掘り下げていく、筆者の考察の深さが感じ取れる気がします。地頭の良さと言われることもあるでしょうが、これはどんな仕事をしていても求められますよね。しかし、一般通念として理解されていることを、実際はそれがただの固定観念で、USJにお客さんを多く呼び込むためには崩しても構わないと、”サイエンス”の世界で論じられるまで言語化できることが森本さんの秀でたところだと思いました。数式を使って言語化できるというのは大変な武器ですね。

 

第3章

達成したい目的があるとき、次になすべきことは、その目的が達成できているときの状況を想像力と数値を使って徹底的に考えること。ここはずいぶんとアートな部分ですから、後に必ずサイエンスで検証しなくてはなりません。

一番良いと思えるプランAに対して、必ずプランBを考えてみる

それによって前提とした想定の脆弱さや盲点に事前に気づくことができる。

 個人的に計画業務が多いので、身に沁みます。突発的な対応であっても、プランB、プランCまで考えを巡らせて、計画の緻密さを高められるようありたいです。

 

第4章

サイコパス性とは、「感情が意思決定の邪魔にならない性質」

 企業のトップにサイコパスが多いは納得しますし、どちらかというと外資系の社員の方が仕事面ではサイコパスを感じさせる人が多いように感じます。(文化の違いですかね。)しかし、合理的な判断で仕事を進めていくには、その価値観を理解・体得できないとやっていけないとも感じます。私の上司もサイコパス性が強い人で、実際にそのギャップに直面した時、ついていけずに苦慮した経験があります。そして、人間は元来、自己保存の本能があって、変化をする(決断をする)ことによるストレスから自分を守ろうとすることにも納得です。まさしく自分を守っていました。後から述べられていましたが、欧米人の方がサイコパス性を発揮する人が多いようですね。

ビジネスの世界でも、我々の強み封殺するような業界のルール変更や、ゲームの軸をひっくり返す、戦略的ゲームチェンジの機会を常に狙っています。

確かに考え方の次元が違います。

 

 以降の章(第5章~)については、一度中断いたします。ここから内容が専門的になり、慣れていない私にとってはすんなり理解ができませんでした。ここまで、割と簡単なマーケティングの導入部分と、ちょっと仕事における自己啓発的な内容も踏まえて面白い内容でした。